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エアライン

未分類
03 /13 2014
その日のNY行きは朝から嫌な予感がしてたんだ。

いつも通りの朝のはずなのに、何かが違うんだよ。

何がって言えないけど、何かが違うっていう漠然とした確信だけがあって、でも「何が」なんて考えてる時間もない。行かなきゃ乗り遅れる。

911以来やたら厳重になったゲートを抜けて、出発までぼんやり待つ。

ああ、飯、食べてくれば良かった。

空港の、とりわけゲートくぐった先の売店は何もかも値が張る。

足元見た商売してやがんだ。

ほら、やっぱりこう、良くねぇ流れだ。

いつもなら朝食を忘れるなんてまずしない。

今日に限って、さ。

悩んだ末、外でならちょっといいランチが食えそうな値段の高額低品質サンドイッチとコーラを買って、飛行機の離発着が見えるロビーのベンチで頬張る。

食べ終わって、うんこして、戻ってきたところで丁度時間。

ボーイングなんちゃらだ。

なんだっけ、あのボーイングのやたら「良くないことが起こる機種」は。

777だか787だか。

今日乗るのはどうやらそれらしい。多分だけど。

ちゃんと確認してチケット取ればよかった。

まあしょうがない。ここまで着て「不吉な感じがするんでやっぱ乗るの辞めます」とは言えない。

列に並んで、ベルトコンベアで運ばれる加工牛肉みたいに押し流されて、手前でまたチケット見せて、機内へ。

如何にもテロとか起こしそうな中東系の顔の男と目が合う。

でもまあ大丈夫さ。不吉な事っていうのは「こういう事」じゃない。

こういう露骨なのは大概何もねぇんだ。

黒人やイスラムの人間を見るだけで身構える連中もいるけど、そういう「如何にもなにか起こしそうなやつ」ってのは逆にあんま、面倒事は起こさない。


「んぎゃぁああああああああああ!!!!ぎゃああああああ!!!!」


ああほら、これだこれ。赤ん坊の全身全霊の泣き声。

どこから?隣の席から。

イヤホン耳にぶち込んでかなり大きめの音量でお気に入りを再生しても、割り込んでくるレベルの泣き声。

逆の隣は見苦しいレベルのデブで、席の間に一個しか無い肘掛けは完全に奴のテリトリーだ。

そしてなんかデブ特有の酸っぱい臭いがする。

右の席じゃ「この理不尽な世界への抗議」とばかりにガキが全力で泣き叫んで、左の席じゃまさに理不尽の権化みたいなデブがふんぞり返ってひどい臭いを放ってる。

NYまでの快適な旅は只今をもって終了いたしました。

はあ。

まあたかが2時間だ。諦めて目を閉じる。

しかる後、重力切り裂く轟音を唸らせながら、我らがボーイングは空へ。

飛び立って30分くらい。

シートベルトも外せるようになって、ようやく気流が安定してきたかと思った頃、機の前方から怒鳴り声。

隣のガキがうるさくて眠れないから、暇つぶしにやりとりを見る。

あ?

なんだろう。

頭が一瞬、状況を理解できない。

スーツの男の首元で光るアレは、ナイフ?

お?お?と思ってる間に、後ろからも怒声。

そいつもナイフで隣の席のおばさんを羽交い締めにして。

ああ、これはアレだ、いわゆるアレだ、つまりハイジャック的な。

911の自爆テロを思い出す。

そして今朝の嫌な予感についても。

だから俺はNY行きのボーイングになんて乗るべきじゃなかったんだ。

あれよあれよという間に機内は手際よく占拠されて、はい、自爆テロ準備オッケーですって感じで。

犯人の目的はまだわからない。

自爆テロとは別のアレかもしれない。

でも犯人の方々どうみても中東系の顔だし、つまりそういう事なんだろう。

隣の席ではあいかわらずガキがギャーギャー泣き喚いてて、逆隣のデブが放つ悪臭は一層増した気がする。

ハイジャック犯の一人、多分リーダー的なポジションの男が訛りのある英語で怒鳴る。

「いいな!静かにしろ!席を立つな!トイレも許さない!我慢できなけりゃその場でしろ!少しでも怪しい動きをしてみろ?このナイフで「一足先に」旅立ってもらう。こいつは非鉄性だが人を殺すには充分のナイフだよ」

一足先に、ってことは、遅かれ早かれ皆様後を追いますって事。

つまりやっぱり自爆テロ。

はぁ。

最悪だ。

虫の知らせ的な悪い予感がここまでオーソドックスに的中する事って早々滅多にない。

俺は両手をあげながら立ち上がる。

「動くなと言ったはずだ!!死にたいのか!?すぐに座れ!!」

おばさんを人質に取ってた男が俺の席の列まできて、俺にナイフを突きつける。


「俺はさ、死にたいって思ったことがある。
稀なことでもない。わりとよく考えるんだ。自分の死について」


「喋っていいとは言ってないぞ!黙って座らないと本当に刺すぞ!!!」


「ああ、つっても、生きてるのが辛くて死にたいとか、そういうのとはちょっと違うんだ。
なんていうかな、生きててすいませんって気持ちになる。
世の中には超頑張っても不幸な目に遭う人がいるのに、俺なんかほとんど惰性で生きてるけど喰うものに困ってもいない。
自分より不幸な人達に対してどうしようもなく申し訳ない気持ちになるんだ。
熱心な宗教家なら教会の懺悔室で事足りる程度のありきたりな懺悔だけど、生憎俺は無神論者なんだ」


ナイフを持った男の拳が目にも留まらぬ速さで飛んできて、俺の頬を打ちぬく。


「黙れと言った」


俺は頬をさすりながら続ける。


「俺は、俺の命に、生きるに足る価値はないと思いながら日々生きてる。
この考えを”こういう場合”に限って覆すつもりもないよ。
俺は死んでいい人間。
ハイジャックテロに巻き込まれて死んだって、文句言う権利もない人間なんだ」


「なら四の五の言わず黙って座れ!!今度は柄じゃなく刃の方で行くぞ!!?」


男は人質にとってたおばさんを突き飛ばし、俺を次の人質として羽交い締めにする。
羽交い締めにされながら続ける。


「あんた達の国に爆弾の雨をふらせて、俺達の国は強者の側をキープする。
敗北者達から資源も資本も権利も土地も自由も、奪いまくって、搾取しまくって、その恩恵に預かって俺たち一般庶民の生活は成り立ってる。
自爆テロとかしちゃうアンタ達の事情もテレビで観たよ。
自分が自爆テロの実行犯になることで、家族は一生組織に生活を保証されて、生きてける権利を得られるんだってね。
逆に言えば、そうまでしないと生きる権利すら得られないのがあんた達の国だ」


「ガキが知ったふうな事を!!誰のせいで俺たちがこんなっ・・・・てめえら腐った白人どもが全部をぶち壊しにしやがったんだ!てめえら白人がっ!!俺の妻だっててめえら白人がっ!てめえらが降らせた爆弾のせいでっ!!」


再びナイフの柄で顔を殴られる。
極度の緊張のせいか、痛みももう感じない。
ただ頬がジンジンして、鼻の奥がツーンとするだけ。
表面上「冷静なそぶり」を保ってはいるけど、手なんかもうずっと震えっぱなし。


「あんた達の家族を理不尽に殺す事でこの国は潤って、そんな血塗られた潤いにあやかって安穏と生きてる自分を惨めだと思うし、そう感じながらも、この腐りきった社会がもたらす恩恵を拒めない自分は心底卑しい最低の屑だと思うよ。
だから俺はあんた達に殺されても、文句言う権利ないんだ。
そしてここに乗ってる大半の白人だって、俺と同じ、アメリカっていう悪魔に魂を切り売りすることで自分の生活の豊かさを守ってるゲス共だと思う。
だから誰も、殺されたって文句言えないんだ」


一瞬機内が奇妙なざわめきに包まれて、また静まる。


「なら黙って座っとけって何度言えば分かるクソガキがっ!!」


「でもさ、この、俺の横の席のガキ、さっきから泣きっぱなしでうるさくてしょうがないんだけど、このガキはまだ何も試されてないんだ。
この子が育って、将来、「俺達の国の立場を」じゃなくて「あんたたちの国の立場を」今よりよくするために頑張るような大人になるかもしれない。
もちろんただの腐った白デブになる可能性だってある。
でもなんにせよ、この子はまだ何も選択してないし、試されてない。
この子には生きる権利があると思う」


「じゃあ俺の妻は生きる権利がなかったっていうのか!!?だから死んだってのか!?だから爆弾で焼き殺したのかよ!!
俺の娘も、息子も、生きる権利がないのか!??だから毎日爆弾や紛争に怯えて暮らさなきゃいけないのか!??
その白人の子供には生きる権利があって、俺達にはないのかよ!!!
俺だって何十年も死ぬ気で働いて40でようやく自分の店を構えたんだ・・・
慎ましい生活だけど、愛してた。
それをお前らアメリカは「正義を騙って」焼き払ったんだ!俺の妻ごと、俺の店を空爆で焼き払ったんだ!!
店を失って稼ぐ手段もない。
育ち盛りの娘と息子がいるのに、食べ物も満足に与えてやれない。
仕事が無い、食べ物がないからって、お前らの国みたいに政府が保護してくれたりもしない。
当たり前のように近所の子どもたちが餓死する。爆弾や銃で死ぬ。
極限の飢餓からくる略奪強奪、無政府状態になって以降、利権の奪い合いの紛争が毎日のようにあちこちで起こって、地元の人間同士で殺し合いをしてる。
お前たちアメリカは平和の為といって俺達の国に爆弾を降らせて、俺達の国をより悪くさせる一方じゃないか!!!
俺はこの「仕事」を達成する以外に、娘と息子を守ってやることも出来ないんだ。
お前に俺達の気持ちが分かるか!?
自分の命を爆弾にする契約書にサインしなけりゃ、家族をすら守れない国で生きる過酷さがお前に分かるのか!?
こうする以外に子供に飯と安全を与える方法がねぇんだよ!!
俺だって、好きでテロ組織に入ったんじゃねぇ。
人を殺すことが最悪に悪いことだってのも知ってる。
自分の命だって当然惜しいよ。
生きれるなら生きたいよ。
そんな人として当然の感覚くらい、俺達だってちゃんと持ち合わせてるんだよ。
俺達だって人間なんだ。
けどな、”それでも”これを選ぶしか、自分の家族を守る手段がねぇのが俺達なんだよ!!
”人間として当然の生きる権利”を息子と娘に買って与えてやるために、俺とお前ら乗客の命を代金として差し出さなきゃいけねえのがこの糞ったれなゲームなんだよ!!!
それを完遂する以外に、俺の子どもたちを守る手段がねぇんだよ!!」


男は逆上して、ほとんど呼吸できなくなるくらい俺の首もとを締め付ける。


「あんた達から生きる権利を奪って、自分達の権利ばかり叫ぶ俺はほんと屑だと思う。
ほんと死んだほうがいいくらいのさ。
だから俺はいいんだ。ほんとに、カッコつけてるとかじゃなくて、ほんとに、文字通りの意味で、俺は死んでいいサイドの人間。
利己的で自堕落な真っ黒の命。
だからここに子供が乗ってなきゃ、多分死を受け入れたよ。
あんた達の「任務」が完遂して、皆揃って死ぬまで、何もしようとせず、ただ状況に巻き込まれて死んだと思う。
でもさ、ギャーギャーうるさいんだよ、さっきから横で。このガキがさ。
あんたが自分の子供を守るために、これしか選べないっていうの、分かるよ。
現実、ないじゃんね。
「テロ組織に守ってもらう」ってのが最も安全な国なんだ。
国も警察も機能してない。
モラルも同義も尊厳も全部先進諸国に焼き払われて、現実問題、アルカイダに参加することで家族の安全を守るか、そうじゃなきゃ常に飢えと略奪と虐殺に怯える毎日。
父親として、現実それしか選びようがないあんたの立場はよく分かるよ。
だから俺はあんたの選択と行動を否定しない。
否定しないどころか、ある部分では尊敬すらしてる。
家族を守るために、自分が死ぬ事を選べるんだから。
自爆テロを成功させれば、家族は一生組織に守られて他の一般市民よりは安全に生きていける。
そしてそれを選ぶ以外に、子供を守る方法がない現実。
だから、守るべきものを守るために、自分が死ぬ事を選ぶ。
たくさんの人を殺す、その罪を背負うことを選ぶ。
何を犠牲にしても、自分の命を捨てても家族を守る。
あんたの覚悟を俺は尊いと思う。
このアメリカに生まれて、豊かな生活が当たり前のように与えられて、覚悟を試されることもなく安穏と暮らしてる俺たちがあんたの覚悟を否定できるはずない。
だから俺は、だけど、でも、悲しいよ。
どうして誰かが死ななきゃいけないんだろう」


「そんなの俺にだって分かんねえよ!!糞ったれ!!
お前らの国が糞ったれな爆弾なんか落とさなけりゃ俺の妻だって、俺の店だってきっと無事で、そしたら俺だってこんな事しなくたって・・・
俺だってこんな事・・・・・・
死にたい人間なんかいるわけねえんだよ・・・・」


死ぬのが怖いとかじゃなくて、錯乱してるとかでもなく、ただなぜかどうしようもなく涙が溢れてきて、とめられない。


あいかわらず隣の席の赤ん坊はぎゃあぎゃあ泣いていて。


空の上だからっていうだけじゃない、もっと別の、なんだかとても不確かな場所に立ってる感じがして。


思い返せば俺たちはいつだって不確かな場所に立ってたんだ。


小さい頃、オヤジと二人で遠出した日の夜だ。


日が暮れて、日が暮れるとかなり冷え込んで、オヤジは、自分が着てた黒の革ジャンを俺に着せてくれた。


子供の俺は当たり前のように「温かいそれ」を受け取ったけど、オヤジだって寒くなかったはずはなくて。


オヤジが着せてくれたぶかぶかの革ジャンはタバコの臭いがする。


俺はタバコを吸わないけど、タバコの臭いは嫌いじゃない。


きっと世界平和なんて超簡単なんだ。


みんなが奪い合いをやめればいいだけ。


みんなが少し我慢を覚えて、地球の裏側の人にも幾らか気を配ることさえすれば。


きっとそれだけで事足りるのに、人は我慢することより、欲を満たすことばかりに躍起になって、誰かが満たされるために、どこかから余分にかき集めてきて、持って行かれた方は当然足りなくなるから、そこで奪い合いが起きる。


自分だけは他よりマシな生活をしたい人同士が競い合って、取り分と領土をどんどん拡大していって、その分吸い取られた大地は不毛になる。


そのうち「他よりマシな生活」がその地域、国家のスタンダードになって、それが水準になって、その水準に満たない事を不満に感じるようになって、だからまた、他から奪ってくる。


散々奪われ続けてきた側が、それでも大切な誰かを守る為に、文字通りの意味で命がけの牙を剥く。


自爆テロ。


人間の欲望が寄り集まって出来た社会はもはや一つの巨大な生物で、その食欲旺盛な巨大生物の暴虐に歯止めをかけられる立場にいる人間は、いつだって拍車をかけることにしか興味を示さない。


そしてまた俺の頭の中で飛行機が高層ビルに突っ込む。


どれだけの犠牲を払ってでも愛するものを守ろうとする自爆テロ犯の姿は、ハリウッド映画の主人公に最も近い事に大半のアメリカ人達は気づかない。


中東やアフリカで数百万人を殺すアメリカ経済の根幹、搾取と略奪の中心にいたトレードセンタービルの人間たちは「罪なき犠牲者」で、家族を守るために自らの命を賭して「任務」を完遂した男は極悪殺人犯。


犠牲者達の罪を認めることはそのまま自分達の罪を認めることにもなるから、誰もかれもがマスコミの言うままテロ犯を悪、自分達は「罪なき市民」として思考停止して生きてる。


偏りすぎた均衡を取り戻すかのように、悲劇が繰り返される。


もちろんこれは、自爆テロを美化する意図で書いたものじゃない。


殺しあう事の悲しさ、そして「俺達ただの一般市民」ですら、そんな殺し合いの当事者であるということを書いておきたかったんだ。


罪のない人間なんかいない。


そしてその罪は神にお布施をしたり懺悔室で暴露すれば帳消しになるものじゃない。


あるいは罪の意識は「そういうもの」が取り去ってくれるかもしれないけど、いくら神に貢いでも祈っても悲劇的人災は失くならない。


宗教や祈りはただの痛み止めだ。


祈って心の痛みが消えても、痛みの元の病巣は、人間社会の根源的な歪みは変わらずそこに在り続ける。


人間が、自ら変わろうとする意思を持たない限り。


こういう類の事柄を考えたことのあるすべての人に最後言っておきたい皮肉がある。


どうぞ「快適な」空の旅を。

コメント

非公開コメント

No title

はじめましてm(_ _)m
dlsiteで販売されてた作品を拝見させていただき、作品紹介がユニークで『どのような方なのだろう…?』と思ってつい、来てしまいました

上手く言えないのですが…自分には出来ないような、斬新な考え方が読んでて面白いです
そういった記事とか好きなので…
たびたび見に来たり、コメント残したりするかもですが
暖か…生ぬるい目で見てやってくださいますようお願い申し上げますm(_ _)m

Re: No title

どもども!
最近はなるたけ絵のほうに力注ごうと思ってて、文章の方はかなり惰性で書きなぐってる感滲んでる有り様でなんだかアレなんですけども、愉しんで頂けたならこれ幸いですな`▽`

こういう文章とか、書く時はもう評価されたいとか理解されたいとかじゃなしに、ただ単に自分が今書きたい気分だからっていうだけで書いてて、誰かに読んでもらう事とかはあんまり考えないんだけど、実際書いたものを誰にも読まれないとなんだかこうやさぐれた気持ちになっちゃったりするのも事実で、だからまあなんというか、コメントありがとうございます`▽`

上にも書いたとおり最近はもっぱら絵ばっか描いてて、だからこういう文章はあんまし頻繁にはアップしないかもだけど、時々は多分気まぐれで書くだろうから、まあ時々気まぐれに生ぬるい感じで見に来てやっていただけると嬉しいですな。

メランコル

基本エッチな絵を描いてます`~`

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