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笑わない少女と仮面の男

未分類
12 /22 2013
少女は笑わない。

笑うことをくだらない事だと考えてるから。

笑うことは嘲笑う事だと感じてるから。

だって少女に向けられる笑みはいつも嘲笑だった。

小さい頃からいつでもそうだった。

だから少女はあらゆる全ての笑みを嘲笑と捉えたし、自身もまた笑わなかった。

ある日少女の前に男が現れた。

ニヤけた顔のいかにも胡散臭い男だ。

胡散臭いだけじゃない、怖い。

だって少女にとって男とは、女を迫害する生き物でしかなかったからだ。

だから少女は訝しんで恐怖した。

露骨に嫌な顔をして、男を遠ざけた。

けれど男は邪険に扱われることにもなれてるのか、全然気にする風でもなく、またすぐおちょくるように話しかける。

ああ、イライラする。

少女は苛ついて、閉じる。

気づかないうちにきっと少しあいてしまってたんだ、扉。

だからこんな軽薄そうな男が声をかけてくる。

私の迂闊さが産んだ遭遇だ。

きちんと閉じておかなきゃいけない。

そうしなきゃまたいつだって、何度だって災厄は訪れる。

少女は思い出している。

いつか同じふうに笑いかけてきた少年の事を。

少年は少女に笑いかけた。

消しゴムを貸してくれたし、自分から話しかけてきてもくれた。

だから少女は少年を信じた。

少年を好きになった。

少年が少女と仲良しになると、いじめは少年にも飛び火した。

少女はずっと、クラスで苛められてたんだ。

「○○菌がうつったー、あいつももう菌に犯されてるからみんな近づくなー!」

○○菌は私の事。

○○には私の苗字が入る。

私の菌がうつったから、あいつにも近づくな。

そう言われて少年は、簡単に翻した。

私に差し伸べたその手を。

翻したんだ。

「近づくなよ○○菌がうつるだろ」

私に笑いかけた少年が、私に言う。

ああ、馬鹿だ。

こいつも馬鹿だし、信じた私も馬鹿だ。

自分も巻き込まれると分かったら、すぐに手を離す。

手を離されたら当然落っこちる。

こんな風に。

落っこちれば怪我をする。

だから私は笑わない。

嘲笑うのはくだらない連中がすることだ。

私には必要ないし、嘲笑う人間は嫌いだ。

だからこのニヤケ顔の男は、大嫌い。

大嫌いだから突き飛ばした。

突き飛ばしたのに笑ってる。

ニヤニヤ嬉しそうに。

どうしてだろう、きっと馬鹿なんだ。本物の馬鹿。

だからもっと突き飛ばした。

距離を取るために、突いて、押した。

怪我をする痛さは知ってるから、ちょっとだけ躊躇った。

でもこういう輩に遠慮するとすぐつけあがって踏み込んで来ようとする。

だから心を鬼にして、怪我するくらいに突き飛ばした。

でも、やっぱりこの男はニヤニヤしてる。

一体なんだろう、この男はマゾなんだろうか。

きっとそうだ。キツく当たられることで快感を得るタイプの人間なんだ。

気色悪い。

そもそもこのニヤけ顔が胡散臭い。

私を散々踏みつけてきた人間たちと同じいやらしい目つき。

きっとターゲットは誰でも良くて、都合よく転がって都合よく股を開けばもうそれで。

あるいはお金かな、目的は。

とにかく信じちゃダメだ。こういう人間は絶対に。



嫌いなのに、ウザいのに、なぜか毎日一緒に帰るようになった。


帰る時間になるとニヤニヤ寄ってきて、私がそれを突き飛ばしながら。


それが当たり前になって、それが日常になって、多分また、緩んでしまってた、扉。


だからほら、こんな風につけ込まれる。


とんだ醜態だ。


自業自得だ、馬鹿。


私も、馬鹿。こいつも、馬鹿。


「いってぇ」


そりゃ痛いよ。刺されたら誰だって痛い。


「ちょ、まじいてーわこれ。ありえねー、超いてー」


ほんとに痛そう。でもこいつが悪いんだ。


私があんまりキツく遠ざけなくなったからって、図に乗って、キスした。

ここで私が拒まなかったらもっと酷いことをする気だったんだ。

股間こんなに膨らませて。

気持ち悪い。

だから刺した。

持ってたシャーペンで、太もも刺した。

簡単に刺さらないだろうと思っておもいきり刺したら、想像したより簡単に深くブスッと刺さっちゃって、私は少し動転する。

でも、相変わらずこの男はニヤけてる。

すごく痛そうなのに、口でも痛い痛い言いながら、なぜかニヤけてるから。

私は少しだけ冷静さを取り戻す。

「馬鹿じゃないの?」

「誰が?」

誰が、と聞かれて少し考える。

誰が一番馬鹿だろう。

多分私を含めた人類全てだ。

だからそのまま答えた。

私もあんたも含めた人類全て、馬鹿。

「うわぁ、正しいね。正論だ、ソレ」

正しいねとか言い出した。

ニヤニヤしながら。

一体なんなんだろう、何がしたいんだこの男は。

全く理解できない。

そこでさっきの、キスされた時の膨らんだ股間を思い出す。

ああそうだ、理解できない、事なんかない。

こいつも私とやりたいだけなんだ。だからこんな風に。くだらない。

「死ねよ屑男」

「やっべ、まじいてーコレ死ぬかもまじで」

「太もも刺されたくらいじゃしなないから大丈夫」

「いや、こないだニュースで見たよ、ひったくりに太もも刺されたおばさんがそのまま失血死しちゃったんだって」

「失血死するほど血出てないじゃん」

「え、あ、ほんとだ」

「死ねばいいのに」

「俺がこのまま死んだらお前殺人犯になっちゃうよ?」

「別にいいよ。病原菌も殺人犯も嫌われ者って意味じゃ何も変わらないもん」

「何いってんのお前。病原菌ってなに?」

「あんたの知ったことじゃないから。こっちの話。ていうかもうマジつきまとうのやめて。ストーカーって言って警察に逮捕してもらうよ?」

「警察は実害出るまで動かねーよ」

「実害でてんじゃん。キスされた」

「ああ、たしかにな。した。したわ。でも刺すことなくね?いくらなんでもさ」

「このくらいしなきゃ止まらないじゃん。あんた」

「ああ、たしかに。そうかも。俺馬鹿だからな」

「死ねばいいのに」

「死んだほうがいいかな、俺。そのほうが、お前、嬉しい?」

いつものニヤケ顔で、なのになぜかその言葉はいつもの軽い冗談と違う重みを含んでて。

即答できない。

死ね、と、言えない。

なんだろう。なんでだろう。

ああ、そうだ。

死んだほうがいいかな。自分。

私の中にずっとあった言葉だ。

私が答えられないでいると、彼がははっと声をあげて笑う。

嫌な笑い方だ。私がすごく嫌いな笑い方。イラッとする声。

「世界ってうまく出来てるよな」

「は?いきなり何の話?」

「似たもの同士が引き寄せられる変な原理があるんだよ、この世界にはさ」

「あんたと私が似てるってこと?ありえないし。マジありえないからそれ」

「死んだほうがいい」

「は?」

「死んだほうがいいよな、自分。もうこれ。死んだほうがいい。絶対そのほうが正解だ」

「何いってんの?刺されて頭おかしくなった?」

「お前いつもそういう事考えながら、そういう気持ちで生きてただろ」

「だから意味分かんないって。勝手に妄想膨らませて妄想会話やめてくれる?マジキモイから」

「無理すんなよ」

「だからなにがよ。ほんとに最悪にキモいからアンタ」

「お前、今、自分にかつて向けられたナイフを見よう見真似の猿マネで必死に繰りだそうとしてる。キモい、ウザい、死ね、消えろ、屑。全部、お前が傷ついた言葉。だから俺に今、向けてる」

確かにそうかも、とか思って、一瞬言葉に詰まる。けど。

「うるっさいのよ!あんたに何が分かんのよ!知った風に言わないでよ!なんなのあんた、いっつもニヤニヤ胡散臭い笑顔で、私に付きまとって、エッチな事したいんでしょ?いきなりキスしてチンコおっ勃てて、人として最低すぎるからアンタ!」

「胡散臭いかな、笑顔」

「超胡散臭い」

「あは、笑顔って難しいなぁ。うまく笑ってるつもりだったんだけどなぁ」

「そんなの、うまく笑えたって、そんな笑顔ただの詐欺じゃん」

「あー、そうだな。そうかも。詐欺だなそんな笑顔。確かに」

「あんたの笑顔ほんっと胡散臭いのよ。いかにも上辺にだけ貼り付けましたみたいなニヤケ顔」

「難しいよ本当に」

「だから嘘の笑顔なんか」

「いや、”本当に笑う”のがさ。難しいなって」

私はまた、何も言えなくなる。

何かがいつもと違うんだ。

この男がニヤニヤ話しかけてきて、私が邪険にあしらう、そんないつものやりとりと、何かが今日は違う。

こいつのニヤケ顔も、私の拒絶も、いつも通りなのに、何かが。

「どうしたら心から笑えるんだろう」

「知らないよそんなの。私笑いたいなんて思わないし、思ったことないし、どうでもいい」

「ほら、似てる」

「全然違うじゃん。あんたは笑いたいんでしょ、私は笑いたくない。真逆じゃん」

「あー、説明すんのむつかしいなあ、これ。こういうの。真逆だけど、でも似てるんだよ。マジで」

「意味分かんない」

意味分かんない。言うほど、分からなくない。

ほんとは少し、分かり始めてる。

でも、なんか、嫌。こんな奴と似てるなんて、絶対認めたくない。認められるはずない。

「ねえ、キスしていい?」

「は?馬鹿?真面目に馬鹿なの?さっきキスして刺されて、なんでそういうセリフ出てくるの?頭の病気?」

「どうしたらいいんだろう。俺、お前とキスしたい」

「キスしてその後もっとエロい事したいんでしょ」

「うん。したい」

「マジキモイ。死ね」

「お前は俺とはしたくない?」

「死んでもしたくない。するくらいなら死ぬ」

「そこまでかよー。どんだけ俺嫌いなんだよ」

「当たり前じゃん。いつもニヤニヤキモい笑顔浮かべて、からかうように寄ってきて、いきなりキスとかしてきて、あんたみたいな最下等ゲス生物のどこを好きになれっていうの?」

「そういうところを、好いていただければ、と」

「ありえなさすぎ。どんだけ都合いい脳みそしてんの。そんなの好きになれるわけないじゃん」

「俺、間違ってんのかな」

「1から10まで全部間違ってるでしょ。常識的に考えて。そんなことも分かんないの?」

「えー、俺結構正解に近い線いってると思ってたんだけどなー」

「どうしてそんな思考になるわけ?マジ無理だから、ありえないから。完全に外してるでしょ正解の的」

「じゃあどういうのが正解なのさ?お前とエッチしたいと思ってる男が取るべき行動、その正解を教えて」

「エッチとか、馬鹿じゃないの!?ありえない、その時点でありえない、最低、屑すぎて話にならないから」

「でも本心よ?」

「本心だからもっとタチが悪いんじゃない」

「じゃあ本心じゃなく、薄っぺらいチャラい感じでこの子とエッチしたいとか思ってたほうがいいの?」

「そういう問題じゃなくて!」

「俺、馬鹿だから、本当に分かんないんだ。何が正解で、何が間違ってるのか。でも、お前が俺に死ねって思ってるなら、やっぱ俺間違ってるのかな」

「死ね、、、とは、、、そこまでは、、、本心では思ってないけど、、、」

「じゃあ生きてて欲しい?」

「私に関わらないところで生きててほしい」

「うわ、それ傷つくなぁ。シャーペンで刺されるより来るわぁ」

「でも本心。嘘言ったほうがいい?」

「いや、嘘はいらないよ。それがお前の本心なら、受け止める他ない。でもやっぱ傷付くわー」

「なんで」

「だから俺はお前が好きだって言ってるじゃん」

「そんなの口で言ってるだけでいつもニヤけてほんとはエッチしたいだけで」

「お前が好きだからお前に話しかけるの緊張するし、でも俺みたいのにいきなり強張った顔で声かけられたら怖いだろうなって思ってだから無理して笑おうとして、あと俺まじで緊張するとなぜかにやにやしちゃうんだよ、これほんとに、なぜか昔から」

「そ、そんなの知らないし、結局はエッチしたいだけなんでしょ」

「好きな人とエッチしたいと思うのはいけないこと?」

「そんな、お互いのこと大して知りもしないのにいきなり好きとか言ってる時点でそんなの信ぴょう性ないし、絶対おかしいし、そんなの、、、」

「だって、俺とお前、似てる。好きになるの、変?」

ああ、、もう、なんで、こう、攻めてくるわけ?

私が悪いワケじゃないのに、なんでこう、私が責められる側、みたいになってるわけ?

意味分かんないし、不愉快だし、ほんとありえない。

「あ、ごめん、言及みたいなことするつもりはないんだ。ただ俺もお前と話す時はいつも必死だから、つい、こう、なんか、こう」

必死なのになんでそんなヘラヘラ、、、の、理由はもう聞いた。

聞いたら、まあ、納得した。なんとなく、わかる。私も、ちょっとそういうの分かる。気がする。

不安になったり緊張したりすると、それが周囲にバレるのが嫌で、逆になんか、なぜかニヤニヤしちゃう。

私もちょっと、そういうの、ある。

「でも、どうせあんたも、自分が不利な立場に追いやられたら、私のことだって突き放すんでしょ。他の奴らみたいに」

「あ、それはないわ。そこはちょっと否定するわ。だって俺も、そういう風に、信じてた人に急に突き放された時の気持ち、分かるもん」

ああ。

似てるって、そういうこと。

このヘラヘラ男も、誰かを信じた事があって、信じた人に裏切られた事があって、傷ついた事があって、だから私と似てて、だから私を好きになって、だから。

自分の望む方向とは別の完成形を目指して、勝手に頭のなかで組み上がっていくパズルが非常に不愉快で、だから、強引にこの思考を掻き消す。

「俺、お前の事好きだから、近づきたいし、キスしたいし、エッチしたいし、絶対裏切りたくない」

「し、死ねよ馬鹿!」





そして、彼は翌日本当に死んだ。

私が刺したシャーペンが原因で。

ほんとに、太もも刺された程度で、死んだ。

人間って呆気無く死ぬんだ。

とても簡単に、死ぬ。

警察が「凶器の持ち主」である私のところに来て、いろいろ聞いていったけど、なぜか逮捕はされなかった。

逮捕されてないから裁判もなかったし、なんか本当に全部うやむやな感じで、なんだかそこがまた警察らしいなって思った。

彼が死んで、少しだけ周りが慌ただしくなって、でも一週間もしたらいつもの日々。

人が一人死んでも、世の中はあたり前のこととしてそれを受け入れて、勝手に回ってく。

私はそんな世の中のことが、以前よりまた少し嫌いになった。

死んだ彼に対する罪悪感はさほどない。

全くないといえば嘘になる。

そりゃ多少はある。

でも、泣いて懺悔するほどの強い感情が沸き立つかといえば、そういうのは、ない。

ただ、なんか、まあ、ごめんなさいって。そのくらいで。

だって私は本当にずっと彼の事が怖かったし、嫌いだった。

最後、死ぬ前日にした会話は彼の印象を少しだけ変えたけど、でも、私の中の彼の立ち位置を動かすにはあまりに急すぎたんだ。彼の死は。

現実感があまりなくて、ただぼんやりとした日々が延々横たわっていて。

きっと普通の人なら、もっと人を殺した事に苦悩したり、懺悔したり、後悔したり、色々あるのかもしれない。

でも私はただ「ぼんやりしてる」としか言えない。

残酷な人間なのかもしれないし、頭がおかしいのかもしれないけど、私はただぼんやりしていて、それについて何かをいう友達も私にはいないから。

全部どうでもいい。

こんなことを人に話したってきっと誰も理解しないと思うけど、これが実際の現実の私だし、誰に分かってもらう必要もない。

何も変わらない。

私にずっと付きまとってたニヤけ顔の男がいなくなって、日常はその一点を除いて全部、元のまま。

人生を浪費するには多少コツがいる。

でもそのコツを掴んじゃえば、後はほとんど何も考えないでも簡単に回ってく。

それが人生。

年月は瞬く間に過ぎる。

年を取れば自然と学校も卒業になるし、働かざるをえなくなって、置かれる立場、環境は自動的に移り変わっていく。

感慨も特にない。

思い出も思い入れも大してないから。

AがBに変化した、それだけのこと。

私にとってAもBも同等に価値などない。

新社会人になって1年、新しい新入社員が入ってきて、つまり私にも後輩が出来る。

その中にひとり、やたら異質なオーラを放ってる男がいた。

誰とも交わろうとせず、上司に媚を売ることもせず、ただただひたすらに、暗い。

陰険なオーラ全開で、完全に閉じて、殻に閉じこもってる感じの。

そんな風だからすぐ同期からも先輩からも上司からも嫌われて。

社内イジメ。

イジメは大人になってもなくならない。

どこにいっても、年をとっても、人間っていう生き物が最低最悪に馬鹿なのは変わらないんだ。

でも彼はどんなにイジメられても、誰からも必要とされず、邪険にされても、慣れた風にのらりくらりと、厚かましい顔で平然と、会社を辞めることもせず、イジメられながら、ただそこに、当たり前の顔をして、いる。

なんだか、彼を見てると疼く。

ああ、似てるんだ。

まるで。

そう、私だ。


気持ち悪い。


そう感じるはずだった。


私は自分が嫌いで、だから自分に似た彼を、嫌悪するのが当然で、何より彼は暗くてキモくて無口でつまらなくて、顔だってイケてもいないし、どこもいいところがないのも私と一緒。


なのに。


私はなぜだろう。


彼に親近感を抱いて、多分、これは、好意?


くだらない。


全部くだらないよ。


「ねえ、今日帰りに、ご飯どう?」


ほんと、くだらなすぎて。


「いえ、そういうの僕苦手なんで」


ああ、最悪。なんだこれ。もう、ほんと最悪。


「いいじゃん私がおごるからさ」


馬鹿は誰?


「あの、ていうか、僕が無口でイジメられてるから、同情してるとかなら、そういうのいらないですよ。慣れてるし、むしろそういう押し付けがましい同情とか、迷惑ですから」


ああ、ほんと、笑っちゃう。


「あは。ほんと、なんだろ。笑っちゃうなあ、こういうの」


私達は、蟲だ。

「からかってるんですか?そういう新手のイジメですか?怒らせようとしても無駄ですよ。そういうのにイチイチ腹を立ててお望み通りのリアクションするほど僕も子供じゃないんで」


小さな光に群がる、蟲だ。


「いや、ごめんね、バカにするつもりはないんだけど、でも、なんか、我慢できなくて、あは」


連綿と続く命の連鎖に、きっと意味なんかない。


「あの、先輩に向かってこういう事言うべきじゃないんだと分かってますけど、でも、不愉快です。本当に」


ああ、なのに、なんで、こんなに、触れたいんだろう。触れずに、いられない。


「似てるんだよ、私達」


くだらないことを、私はしよう。人間のすること、全部が等しく最低でくだらないんだから。


「どこも似てませんよ。あなたは今最高にイラつくからかい顔でヘラヘラ笑ってて、僕は今、そんなあなたに対して、真剣に腹を立ててます。あなたはいつだってやる気なさそうだし、僕はそういう軽薄な人間が許せない。誰に嘲笑われても僕は僕なりの流儀で真剣に仕事に取り組む。あなたと僕の一体どこが似てるっていうんですか?」


こんな茶番じみた奇跡になら、笑ってみてもいい。


「そういうところが、よ。いいでしょ。ご飯は無理でも、今日は一緒に帰りましょ。折角のクリスマスだしね」



今なら分かる。


「だから絶対嫌ですって。なんでよりにもよって一番嫌いな会社の先輩と、よりにもよってクリスマスに一緒に帰らなきゃいけないんですか。っていうか身体近づけないでください!ちょ、腕勝手に組まないでください!これだってセクハラですよ!女上司が男部下にするパワハラです!」


あの日の彼の正しさが。


「ほんっと、君って頭硬いなぁ」


なぜこの青年がこんなに、こんな風に頭硬くなっちゃったのか、なんでこんなにも意固地に。

嫌でも、その「なぜ」が分かってしまう。だって、私も。


「馬鹿にしてるんですか?はい、それもパワハラ発言ですからね。メモしておきます。訴訟する際の証拠にしますんで」


だから、こんな態度も可愛く見えてしまって。


「いいから帰りながら話そ」


人間を、可愛いなんて思ったのは、生まれて初めてかもしれない。


「だからあなたとは帰りませんってば!」


だからこんなにも話してて安心するし、だから好意のような感情だって。


「っていうか帰り道同じ方向だし」


意味がわからないくらい、心が、温かい。


「じゃあ僕は別の道から帰ります!」


躍動。リズム。鼓動。


「ほんっと、似てるなあ」


それら全部が心地いい。


「だからどこがですか!」


この男にうっかり刺されて死んでも、いいかもしれない。


「だから、そういうところがよ」


それで彼の運命をほんのすこし動かせたなら、それはきっと幸せなことだ。


「全くもって意味不明です。理解不能です。あなたとは会話が成立しないようです」


だから、あの日彼が最後に見せた表情が、私には理解できる。


「じゃあ諦めて、私に付き合って」



世界はこんなふうに、できている。

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メランコル

基本エッチな絵を描いてます`~`

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