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笑わない少女と仮面の男

未分類
12 /22 2013
少女は笑わない。

笑うことをくだらない事だと考えてるから。

笑うことは嘲笑う事だと感じてるから。

だって少女に向けられる笑みはいつも嘲笑だった。

小さい頃からいつでもそうだった。

だから少女はあらゆる全ての笑みを嘲笑と捉えたし、自身もまた笑わなかった。

ある日少女の前に男が現れた。

ニヤけた顔のいかにも胡散臭い男だ。

胡散臭いだけじゃない、怖い。

だって少女にとって男とは、女を迫害する生き物でしかなかったからだ。

だから少女は訝しんで恐怖した。

露骨に嫌な顔をして、男を遠ざけた。

けれど男は邪険に扱われることにもなれてるのか、全然気にする風でもなく、またすぐおちょくるように話しかける。

ああ、イライラする。

少女は苛ついて、閉じる。

気づかないうちにきっと少しあいてしまってたんだ、扉。

だからこんな軽薄そうな男が声をかけてくる。

私の迂闊さが産んだ遭遇だ。

きちんと閉じておかなきゃいけない。

そうしなきゃまたいつだって、何度だって災厄は訪れる。

少女は思い出している。

いつか同じふうに笑いかけてきた少年の事を。

少年は少女に笑いかけた。

消しゴムを貸してくれたし、自分から話しかけてきてもくれた。

だから少女は少年を信じた。

少年を好きになった。

少年が少女と仲良しになると、いじめは少年にも飛び火した。

少女はずっと、クラスで苛められてたんだ。

「○○菌がうつったー、あいつももう菌に犯されてるからみんな近づくなー!」

○○菌は私の事。

○○には私の苗字が入る。

私の菌がうつったから、あいつにも近づくな。

そう言われて少年は、簡単に翻した。

私に差し伸べたその手を。

翻したんだ。

「近づくなよ○○菌がうつるだろ」

私に笑いかけた少年が、私に言う。

ああ、馬鹿だ。

こいつも馬鹿だし、信じた私も馬鹿だ。

自分も巻き込まれると分かったら、すぐに手を離す。

手を離されたら当然落っこちる。

こんな風に。

落っこちれば怪我をする。

だから私は笑わない。

嘲笑うのはくだらない連中がすることだ。

私には必要ないし、嘲笑う人間は嫌いだ。

だからこのニヤケ顔の男は、大嫌い。

大嫌いだから突き飛ばした。

突き飛ばしたのに笑ってる。

ニヤニヤ嬉しそうに。

どうしてだろう、きっと馬鹿なんだ。本物の馬鹿。

だからもっと突き飛ばした。

距離を取るために、突いて、押した。

怪我をする痛さは知ってるから、ちょっとだけ躊躇った。

でもこういう輩に遠慮するとすぐつけあがって踏み込んで来ようとする。

だから心を鬼にして、怪我するくらいに突き飛ばした。

でも、やっぱりこの男はニヤニヤしてる。

一体なんだろう、この男はマゾなんだろうか。

きっとそうだ。キツく当たられることで快感を得るタイプの人間なんだ。

気色悪い。

そもそもこのニヤけ顔が胡散臭い。

私を散々踏みつけてきた人間たちと同じいやらしい目つき。

きっとターゲットは誰でも良くて、都合よく転がって都合よく股を開けばもうそれで。

あるいはお金かな、目的は。

とにかく信じちゃダメだ。こういう人間は絶対に。



嫌いなのに、ウザいのに、なぜか毎日一緒に帰るようになった。


帰る時間になるとニヤニヤ寄ってきて、私がそれを突き飛ばしながら。


それが当たり前になって、それが日常になって、多分また、緩んでしまってた、扉。


だからほら、こんな風につけ込まれる。


とんだ醜態だ。


自業自得だ、馬鹿。


私も、馬鹿。こいつも、馬鹿。


「いってぇ」


そりゃ痛いよ。刺されたら誰だって痛い。


「ちょ、まじいてーわこれ。ありえねー、超いてー」


ほんとに痛そう。でもこいつが悪いんだ。


私があんまりキツく遠ざけなくなったからって、図に乗って、キスした。

ここで私が拒まなかったらもっと酷いことをする気だったんだ。

股間こんなに膨らませて。

気持ち悪い。

だから刺した。

持ってたシャーペンで、太もも刺した。

簡単に刺さらないだろうと思っておもいきり刺したら、想像したより簡単に深くブスッと刺さっちゃって、私は少し動転する。

でも、相変わらずこの男はニヤけてる。

すごく痛そうなのに、口でも痛い痛い言いながら、なぜかニヤけてるから。

私は少しだけ冷静さを取り戻す。

「馬鹿じゃないの?」

「誰が?」

誰が、と聞かれて少し考える。

誰が一番馬鹿だろう。

多分私を含めた人類全てだ。

だからそのまま答えた。

私もあんたも含めた人類全て、馬鹿。

「うわぁ、正しいね。正論だ、ソレ」

正しいねとか言い出した。

ニヤニヤしながら。

一体なんなんだろう、何がしたいんだこの男は。

全く理解できない。

そこでさっきの、キスされた時の膨らんだ股間を思い出す。

ああそうだ、理解できない、事なんかない。

こいつも私とやりたいだけなんだ。だからこんな風に。くだらない。

「死ねよ屑男」

「やっべ、まじいてーコレ死ぬかもまじで」

「太もも刺されたくらいじゃしなないから大丈夫」

「いや、こないだニュースで見たよ、ひったくりに太もも刺されたおばさんがそのまま失血死しちゃったんだって」

「失血死するほど血出てないじゃん」

「え、あ、ほんとだ」

「死ねばいいのに」

「俺がこのまま死んだらお前殺人犯になっちゃうよ?」

「別にいいよ。病原菌も殺人犯も嫌われ者って意味じゃ何も変わらないもん」

「何いってんのお前。病原菌ってなに?」

「あんたの知ったことじゃないから。こっちの話。ていうかもうマジつきまとうのやめて。ストーカーって言って警察に逮捕してもらうよ?」

「警察は実害出るまで動かねーよ」

「実害でてんじゃん。キスされた」

「ああ、たしかにな。した。したわ。でも刺すことなくね?いくらなんでもさ」

「このくらいしなきゃ止まらないじゃん。あんた」

「ああ、たしかに。そうかも。俺馬鹿だからな」

「死ねばいいのに」

「死んだほうがいいかな、俺。そのほうが、お前、嬉しい?」

いつものニヤケ顔で、なのになぜかその言葉はいつもの軽い冗談と違う重みを含んでて。

即答できない。

死ね、と、言えない。

なんだろう。なんでだろう。

ああ、そうだ。

死んだほうがいいかな。自分。

私の中にずっとあった言葉だ。

私が答えられないでいると、彼がははっと声をあげて笑う。

嫌な笑い方だ。私がすごく嫌いな笑い方。イラッとする声。

「世界ってうまく出来てるよな」

「は?いきなり何の話?」

「似たもの同士が引き寄せられる変な原理があるんだよ、この世界にはさ」

「あんたと私が似てるってこと?ありえないし。マジありえないからそれ」

「死んだほうがいい」

「は?」

「死んだほうがいいよな、自分。もうこれ。死んだほうがいい。絶対そのほうが正解だ」

「何いってんの?刺されて頭おかしくなった?」

「お前いつもそういう事考えながら、そういう気持ちで生きてただろ」

「だから意味分かんないって。勝手に妄想膨らませて妄想会話やめてくれる?マジキモイから」

「無理すんなよ」

「だからなにがよ。ほんとに最悪にキモいからアンタ」

「お前、今、自分にかつて向けられたナイフを見よう見真似の猿マネで必死に繰りだそうとしてる。キモい、ウザい、死ね、消えろ、屑。全部、お前が傷ついた言葉。だから俺に今、向けてる」

確かにそうかも、とか思って、一瞬言葉に詰まる。けど。

「うるっさいのよ!あんたに何が分かんのよ!知った風に言わないでよ!なんなのあんた、いっつもニヤニヤ胡散臭い笑顔で、私に付きまとって、エッチな事したいんでしょ?いきなりキスしてチンコおっ勃てて、人として最低すぎるからアンタ!」

「胡散臭いかな、笑顔」

「超胡散臭い」

「あは、笑顔って難しいなぁ。うまく笑ってるつもりだったんだけどなぁ」

「そんなの、うまく笑えたって、そんな笑顔ただの詐欺じゃん」

「あー、そうだな。そうかも。詐欺だなそんな笑顔。確かに」

「あんたの笑顔ほんっと胡散臭いのよ。いかにも上辺にだけ貼り付けましたみたいなニヤケ顔」

「難しいよ本当に」

「だから嘘の笑顔なんか」

「いや、”本当に笑う”のがさ。難しいなって」

私はまた、何も言えなくなる。

何かがいつもと違うんだ。

この男がニヤニヤ話しかけてきて、私が邪険にあしらう、そんないつものやりとりと、何かが今日は違う。

こいつのニヤケ顔も、私の拒絶も、いつも通りなのに、何かが。

「どうしたら心から笑えるんだろう」

「知らないよそんなの。私笑いたいなんて思わないし、思ったことないし、どうでもいい」

「ほら、似てる」

「全然違うじゃん。あんたは笑いたいんでしょ、私は笑いたくない。真逆じゃん」

「あー、説明すんのむつかしいなあ、これ。こういうの。真逆だけど、でも似てるんだよ。マジで」

「意味分かんない」

意味分かんない。言うほど、分からなくない。

ほんとは少し、分かり始めてる。

でも、なんか、嫌。こんな奴と似てるなんて、絶対認めたくない。認められるはずない。

「ねえ、キスしていい?」

「は?馬鹿?真面目に馬鹿なの?さっきキスして刺されて、なんでそういうセリフ出てくるの?頭の病気?」

「どうしたらいいんだろう。俺、お前とキスしたい」

「キスしてその後もっとエロい事したいんでしょ」

「うん。したい」

「マジキモイ。死ね」

「お前は俺とはしたくない?」

「死んでもしたくない。するくらいなら死ぬ」

「そこまでかよー。どんだけ俺嫌いなんだよ」

「当たり前じゃん。いつもニヤニヤキモい笑顔浮かべて、からかうように寄ってきて、いきなりキスとかしてきて、あんたみたいな最下等ゲス生物のどこを好きになれっていうの?」

「そういうところを、好いていただければ、と」

「ありえなさすぎ。どんだけ都合いい脳みそしてんの。そんなの好きになれるわけないじゃん」

「俺、間違ってんのかな」

「1から10まで全部間違ってるでしょ。常識的に考えて。そんなことも分かんないの?」

「えー、俺結構正解に近い線いってると思ってたんだけどなー」

「どうしてそんな思考になるわけ?マジ無理だから、ありえないから。完全に外してるでしょ正解の的」

「じゃあどういうのが正解なのさ?お前とエッチしたいと思ってる男が取るべき行動、その正解を教えて」

「エッチとか、馬鹿じゃないの!?ありえない、その時点でありえない、最低、屑すぎて話にならないから」

「でも本心よ?」

「本心だからもっとタチが悪いんじゃない」

「じゃあ本心じゃなく、薄っぺらいチャラい感じでこの子とエッチしたいとか思ってたほうがいいの?」

「そういう問題じゃなくて!」

「俺、馬鹿だから、本当に分かんないんだ。何が正解で、何が間違ってるのか。でも、お前が俺に死ねって思ってるなら、やっぱ俺間違ってるのかな」

「死ね、、、とは、、、そこまでは、、、本心では思ってないけど、、、」

「じゃあ生きてて欲しい?」

「私に関わらないところで生きててほしい」

「うわ、それ傷つくなぁ。シャーペンで刺されるより来るわぁ」

「でも本心。嘘言ったほうがいい?」

「いや、嘘はいらないよ。それがお前の本心なら、受け止める他ない。でもやっぱ傷付くわー」

「なんで」

「だから俺はお前が好きだって言ってるじゃん」

「そんなの口で言ってるだけでいつもニヤけてほんとはエッチしたいだけで」

「お前が好きだからお前に話しかけるの緊張するし、でも俺みたいのにいきなり強張った顔で声かけられたら怖いだろうなって思ってだから無理して笑おうとして、あと俺まじで緊張するとなぜかにやにやしちゃうんだよ、これほんとに、なぜか昔から」

「そ、そんなの知らないし、結局はエッチしたいだけなんでしょ」

「好きな人とエッチしたいと思うのはいけないこと?」

「そんな、お互いのこと大して知りもしないのにいきなり好きとか言ってる時点でそんなの信ぴょう性ないし、絶対おかしいし、そんなの、、、」

「だって、俺とお前、似てる。好きになるの、変?」

ああ、、もう、なんで、こう、攻めてくるわけ?

私が悪いワケじゃないのに、なんでこう、私が責められる側、みたいになってるわけ?

意味分かんないし、不愉快だし、ほんとありえない。

「あ、ごめん、言及みたいなことするつもりはないんだ。ただ俺もお前と話す時はいつも必死だから、つい、こう、なんか、こう」

必死なのになんでそんなヘラヘラ、、、の、理由はもう聞いた。

聞いたら、まあ、納得した。なんとなく、わかる。私も、ちょっとそういうの分かる。気がする。

不安になったり緊張したりすると、それが周囲にバレるのが嫌で、逆になんか、なぜかニヤニヤしちゃう。

私もちょっと、そういうの、ある。

「でも、どうせあんたも、自分が不利な立場に追いやられたら、私のことだって突き放すんでしょ。他の奴らみたいに」

「あ、それはないわ。そこはちょっと否定するわ。だって俺も、そういう風に、信じてた人に急に突き放された時の気持ち、分かるもん」

ああ。

似てるって、そういうこと。

このヘラヘラ男も、誰かを信じた事があって、信じた人に裏切られた事があって、傷ついた事があって、だから私と似てて、だから私を好きになって、だから。

自分の望む方向とは別の完成形を目指して、勝手に頭のなかで組み上がっていくパズルが非常に不愉快で、だから、強引にこの思考を掻き消す。

「俺、お前の事好きだから、近づきたいし、キスしたいし、エッチしたいし、絶対裏切りたくない」

「し、死ねよ馬鹿!」





そして、彼は翌日本当に死んだ。

私が刺したシャーペンが原因で。

ほんとに、太もも刺された程度で、死んだ。

人間って呆気無く死ぬんだ。

とても簡単に、死ぬ。

警察が「凶器の持ち主」である私のところに来て、いろいろ聞いていったけど、なぜか逮捕はされなかった。

逮捕されてないから裁判もなかったし、なんか本当に全部うやむやな感じで、なんだかそこがまた警察らしいなって思った。

彼が死んで、少しだけ周りが慌ただしくなって、でも一週間もしたらいつもの日々。

人が一人死んでも、世の中はあたり前のこととしてそれを受け入れて、勝手に回ってく。

私はそんな世の中のことが、以前よりまた少し嫌いになった。

死んだ彼に対する罪悪感はさほどない。

全くないといえば嘘になる。

そりゃ多少はある。

でも、泣いて懺悔するほどの強い感情が沸き立つかといえば、そういうのは、ない。

ただ、なんか、まあ、ごめんなさいって。そのくらいで。

だって私は本当にずっと彼の事が怖かったし、嫌いだった。

最後、死ぬ前日にした会話は彼の印象を少しだけ変えたけど、でも、私の中の彼の立ち位置を動かすにはあまりに急すぎたんだ。彼の死は。

現実感があまりなくて、ただぼんやりとした日々が延々横たわっていて。

きっと普通の人なら、もっと人を殺した事に苦悩したり、懺悔したり、後悔したり、色々あるのかもしれない。

でも私はただ「ぼんやりしてる」としか言えない。

残酷な人間なのかもしれないし、頭がおかしいのかもしれないけど、私はただぼんやりしていて、それについて何かをいう友達も私にはいないから。

全部どうでもいい。

こんなことを人に話したってきっと誰も理解しないと思うけど、これが実際の現実の私だし、誰に分かってもらう必要もない。

何も変わらない。

私にずっと付きまとってたニヤけ顔の男がいなくなって、日常はその一点を除いて全部、元のまま。

人生を浪費するには多少コツがいる。

でもそのコツを掴んじゃえば、後はほとんど何も考えないでも簡単に回ってく。

それが人生。

年月は瞬く間に過ぎる。

年を取れば自然と学校も卒業になるし、働かざるをえなくなって、置かれる立場、環境は自動的に移り変わっていく。

感慨も特にない。

思い出も思い入れも大してないから。

AがBに変化した、それだけのこと。

私にとってAもBも同等に価値などない。

新社会人になって1年、新しい新入社員が入ってきて、つまり私にも後輩が出来る。

その中にひとり、やたら異質なオーラを放ってる男がいた。

誰とも交わろうとせず、上司に媚を売ることもせず、ただただひたすらに、暗い。

陰険なオーラ全開で、完全に閉じて、殻に閉じこもってる感じの。

そんな風だからすぐ同期からも先輩からも上司からも嫌われて。

社内イジメ。

イジメは大人になってもなくならない。

どこにいっても、年をとっても、人間っていう生き物が最低最悪に馬鹿なのは変わらないんだ。

でも彼はどんなにイジメられても、誰からも必要とされず、邪険にされても、慣れた風にのらりくらりと、厚かましい顔で平然と、会社を辞めることもせず、イジメられながら、ただそこに、当たり前の顔をして、いる。

なんだか、彼を見てると疼く。

ああ、似てるんだ。

まるで。

そう、私だ。


気持ち悪い。


そう感じるはずだった。


私は自分が嫌いで、だから自分に似た彼を、嫌悪するのが当然で、何より彼は暗くてキモくて無口でつまらなくて、顔だってイケてもいないし、どこもいいところがないのも私と一緒。


なのに。


私はなぜだろう。


彼に親近感を抱いて、多分、これは、好意?


くだらない。


全部くだらないよ。


「ねえ、今日帰りに、ご飯どう?」


ほんと、くだらなすぎて。


「いえ、そういうの僕苦手なんで」


ああ、最悪。なんだこれ。もう、ほんと最悪。


「いいじゃん私がおごるからさ」


馬鹿は誰?


「あの、ていうか、僕が無口でイジメられてるから、同情してるとかなら、そういうのいらないですよ。慣れてるし、むしろそういう押し付けがましい同情とか、迷惑ですから」


ああ、ほんと、笑っちゃう。


「あは。ほんと、なんだろ。笑っちゃうなあ、こういうの」


私達は、蟲だ。

「からかってるんですか?そういう新手のイジメですか?怒らせようとしても無駄ですよ。そういうのにイチイチ腹を立ててお望み通りのリアクションするほど僕も子供じゃないんで」


小さな光に群がる、蟲だ。


「いや、ごめんね、バカにするつもりはないんだけど、でも、なんか、我慢できなくて、あは」


連綿と続く命の連鎖に、きっと意味なんかない。


「あの、先輩に向かってこういう事言うべきじゃないんだと分かってますけど、でも、不愉快です。本当に」


ああ、なのに、なんで、こんなに、触れたいんだろう。触れずに、いられない。


「似てるんだよ、私達」


くだらないことを、私はしよう。人間のすること、全部が等しく最低でくだらないんだから。


「どこも似てませんよ。あなたは今最高にイラつくからかい顔でヘラヘラ笑ってて、僕は今、そんなあなたに対して、真剣に腹を立ててます。あなたはいつだってやる気なさそうだし、僕はそういう軽薄な人間が許せない。誰に嘲笑われても僕は僕なりの流儀で真剣に仕事に取り組む。あなたと僕の一体どこが似てるっていうんですか?」


こんな茶番じみた奇跡になら、笑ってみてもいい。


「そういうところが、よ。いいでしょ。ご飯は無理でも、今日は一緒に帰りましょ。折角のクリスマスだしね」



今なら分かる。


「だから絶対嫌ですって。なんでよりにもよって一番嫌いな会社の先輩と、よりにもよってクリスマスに一緒に帰らなきゃいけないんですか。っていうか身体近づけないでください!ちょ、腕勝手に組まないでください!これだってセクハラですよ!女上司が男部下にするパワハラです!」


あの日の彼の正しさが。


「ほんっと、君って頭硬いなぁ」


なぜこの青年がこんなに、こんな風に頭硬くなっちゃったのか、なんでこんなにも意固地に。

嫌でも、その「なぜ」が分かってしまう。だって、私も。


「馬鹿にしてるんですか?はい、それもパワハラ発言ですからね。メモしておきます。訴訟する際の証拠にしますんで」


だから、こんな態度も可愛く見えてしまって。


「いいから帰りながら話そ」


人間を、可愛いなんて思ったのは、生まれて初めてかもしれない。


「だからあなたとは帰りませんってば!」


だからこんなにも話してて安心するし、だから好意のような感情だって。


「っていうか帰り道同じ方向だし」


意味がわからないくらい、心が、温かい。


「じゃあ僕は別の道から帰ります!」


躍動。リズム。鼓動。


「ほんっと、似てるなあ」


それら全部が心地いい。


「だからどこがですか!」


この男にうっかり刺されて死んでも、いいかもしれない。


「だから、そういうところがよ」


それで彼の運命をほんのすこし動かせたなら、それはきっと幸せなことだ。


「全くもって意味不明です。理解不能です。あなたとは会話が成立しないようです」


だから、あの日彼が最後に見せた表情が、私には理解できる。


「じゃあ諦めて、私に付き合って」



世界はこんなふうに、できている。

河童

未分類
12 /18 2013
「まさかねえ、あの人があんな事件起こすなんてねぇ」


それなりの地位ならある。


「ええ、礼儀正しくて温厚な方でしたよぉ」


それなりの金ならある。


「ほんと、あの人が犯人って聞いて、アタシ、まさかって思ったんですよねぇ」


法によって禁じられていない大概のものは手に入る。


「だって、そんなことする理由がないじゃないですか」


だからどうしようもないほど欲しくなる。


「女子校生を拉致して監禁して、そんなむごたらしい事を平気でする人間だなんて、思ってもみませんでしたよぉ」


禁じられたそれが。


目の前で少女が泣き喚いていて、その口に慣れた所作でガムテープを張りつける僕は「実行前」に想像していたより興奮していない自分自身をどこか俯瞰的に見つめている。


コインの表と裏。


厳密に別けるなら、どこからが表、どこからが裏なんだろう。


そして「片側」を失ったそれは、コインとして機能することが出来るんだろうか。


ああ解ってる。



この世界はいつだって表と裏が同時に存在することで成り立っている。


同時に、「都合よく表と裏に切り分ける事」で社会は成り立っている。




「そんな軽薄な考えで無責任に産むな」



誰を?



僕は、存在しないほうがよかっただろうか。


よかったんだろうな。


ああ、解ってるよ。


だから、「存在しない方がいい人」に僕はなったんだ。


そうだよ。


だからほら、僕の目の前で泣き叫ぶ少女は、身なりからしてきっとイイトコのお嬢さんだ。


この子が親に愛されてるかどうかなんて分からない。


ただ、この子は、世界に受け入れられた子だ。


産まれてくることを肯定されて産まれてきた子供なんだ。


僕は違う。


馬鹿親の無計画なセックスによって作られて無造作に捨てられた命だ。


そして人々はみな言う。


「行きあたりばったりで子供なんか作るもんじゃない。育てれないなら産むべきじゃない」


行きあたりばったりの粗末なセックスがこの世になかったら、生まれてこなかった僕という人間。


僕は親の顔なんて知らない。


生まれてすぐに捨てられたからだ。


僕は親のことを愛しても憎んでもいない。


顔も名前も全く知らない人間を欲したり恨んだりできるほど器用でも愚鈍でもないんだ。


親なんてこの際どうだっていい。


重要なのは、世界が僕の生誕を望んでいなかったということだ。


皆言う。


「我々はあなたを捨てた親に対して「じゃあ産むな」と言ってるのであって、あなたに「産まれてくるな」と言ってるわけじゃないんだ、と。


コインの表と裏。


裏があるから表が存在するのだということを、そんな世の中の成り立ちの原理を、理解できない人間がいるのはしかたのない事だ。


そういうのって、実際にそれが己の生命に関わるほど切実な立場になってみなければ、正しく理解できない類のことなんだ。


別に彼らが取り分け哀れな愚者というわけでもなければ、捨て子の僕が取り分け惨めな人間というわけでもない。


世界はただ「そのようにして」存在してるというだけの事だ。


ひとつ、あえて「哀れな子羊」をあげるとするならば、なんの罪もないのに、「なんの罪もないから」というだけの理由で僕のターゲットに選ばれたこの少女だ。


この少女こそが、最も哀れなる存在だ。


だから、僕はこの少女に、哀れみの目を向けない。


だって、哀れみの眼は、哀れな羊の尊厳を最も致命的に削ぐものだから。


ああ、公言しよう。


僕は変態だ。


女子校生を拉致して縛って監禁して猥褻な事をする変態だ。


そういうのってすごく興奮するんだ。


けれど「尊厳の剥奪」は僕の目的に含まれない。


凌辱をしたいだけなんだ。


分かる人にはわかるだろうし、分からない人には全く分からないだろう。


野球中継だってそうだろう?


毎シーズン欠かさずに見る事を生きがいにする人間がいて、あんなのナニが面白いのか全くわからないという人間がいる。


同じことだよ。


少女を拉致して監禁して、こういう事するのもさ。


分かる人間と、わからない人間がいる。


それだけのことだ。


僕は自分が変態であることも屑であることも自覚してる。


誰に弁明するつもりもない。


弁明する理由がないんだ。


社会は顔も知らない僕の両親に言った。


「産むべきじゃなかった」と。


両親が「行きあたりばったりで安易に産んだりしなければ、生まれてこなかった命」が僕だ。


子が正しき秩序から産まれるべき存在であるなら、僕の分の席はこの人間社会の中に最初から存在しないということだ。


僕は人間社会の外側を、生まれた瞬間からずっと生きてきた。


人間のふりをして、温厚なふりを、まともなふりをして、何十年も生きてきた。


それはただの擬態能力だ。


僕の本質は別の場所にある。


とても自然なことなんだ。


僕好みのかわいい女子校生を拉致して欲情のまま犯したいと思うのは、僕にとってとても自然な心の状態なんだ。


ああ、大丈夫。


分かってもらおうとは思っていないからね。


だって、君たちは「そっち側」だものね。


僕はこっち側。


分かり合えるはずがないんだ。


見えないけれどたしかに線があって、猿と人間にはDNA上ほとんど差異がなくてもやっぱりそこには差があって、人間は猿を実験動物として扱って平気で殺す。


だから「僕という種」は、人間の少女をなんの躊躇いもなく、喰う。


自然の摂理だ。


これはただの摂取だ。


生きるためには代謝に要するエネルギーを随時補填する必要がある。


人間がブタや牛を食って生きるように、僕は女子校生を食って生きる。


人間だって、自分が殺して食うブタや牛に「ねえ君、殺していいかい?僕のために、わたしのために死んでください」とイチイチ許可を乞うたりしないだろう?


この世のあらゆる命は、殺されて食われる側の許可など得ず、ただ傲慢に自分の側の都合で殺して奪って食う。


それが「人間も含めた」自然界のあらゆる生き物に適用されているルールだ。


置き換えるなら僕は河童だ。そして吸血鬼でもある。


劣性遺伝子同士の配合で染色体異常を有して生まれた子供。


彼の皮膚はまるで妖怪のように全身鱗で覆われていて、それは不吉な予感を掻き立てる不気味な姿で、だから彼の両親は、生後まもない彼を川岸に捨てた。


川岸に住む乞食たちによって育てられた彼を見た町の人が言った。


「昨日川辺で河童を見たよ。皮膚がまるで魚の鱗みたいだった。あんな人間は見たことがない。アレはきっと半魚人だ。あれこそが河童だよ」


血を吸いたいという衝動は、考えるより先に、ただ自然とそこにあった。


僕は犯して、犯して、また犯した。


拉致した少女を、犯して、犯して、また犯した。


何度も何度も何度も、犯したんだ。


泣いて嫌がったよ。


だから殴った。


殴ると余計泣くんだ。


だからもっと殴って、手が痛くなったから蹴って踏んだ。


そしたら静かになった。


だからまた犯した。


もちろん避妊具なんて使わなかった。


何度も何度も犯して、ある日、少女の腹が膨らんでる事に気づいた。


少女は言った。


この子を産む、と。


社会はあたかも「自分が正しい」かのような口ぶりで言うだろう。


「そんな子供絶対に産むべきじゃない」と。


産まれてくるべきじゃなかった子供。




ああ、そうだ、なんだか、まるで。



少女はそれでも。



顔を殴られても、腕を蹴られても、異様に膨らんだ自分のお腹だけ大事そうに、守るように。



こんな年端もいかない少女に育てられるはずがない。



強姦魔に孕まされた子など、どう考えたってきっとマトモには。



誰も賛成しないだろう。



誰も祝福しないだろう。



「あなたに対して、産まれてくるべきじゃなかったと言うつもりはないのよ。ただあなたの親に対してね、生むならもっと真剣に考えて、ちゃんと責任を持って、それが出来ないなら、安易には産むべきじゃないかなって、そういう」



脳味噌の腐りきった蛆虫どもが。



コインの表と裏。



ああ、苛つかせる。



表と裏は繋がって、2つで一つなのに、物事を綺麗事の範疇に収めるために何でもかんでも都合よく分けて考えたがる人間という愚鈍で下劣な生き物。



僕を苛つかせるよ。全部。



ねえ、母さん。



それでもこのむすめがね、絶対に産むだなんて言うから。



殺したよ。



ブタみたいに膨らんだお腹を何度も何度も踏んで、蹴って、刺して、胎児ごと殺してやった。



死に際はブタみたいな声で鳴いてたな。



はは。



分かってないんだよ。



産まれるべきじゃないんだ。



産むべきじゃない。



だって、理不尽と不慮から生まれた芽が、正しく席を与えられて、陽のあたる場所を与えられて、真っ直ぐ育つようには、世の中は出来てないから。



この星は「僕達」の住処じゃないんだよ。



なあ、名前もしらない僕の息子。



こんな世界に君は産まれてくるべきじゃないんだ。



君が生きていくにはあまりにこの世界は歪んで腐りすぎてる。



劣性遺伝、河童、吸血鬼、強姦魔。



全部、僕への呼び名だ。



けれど、そんな言葉達を産んだのは、君ら人間だ。



悪魔は一体誰だろう。



罪のない命など一つとして存在しない。



あらゆる誰もが、他の生命を食って存命してる。



ならば僕は自覚しよう。



僕の罪を。



欺瞞の上に立ち並ぶ高層ビル群にひしめく汚物達が今日も必死に粉飾決済と詐欺略奪行為に汗水たらして世界を回した気分に浸ってるらしい。



自分の事しか考えられない屑どもだ。



そう、僕と同じ悪魔。



種が違うだけの、下劣な悪魔。



塵芥を隔てた向こう側、誰かが僕を呼んでる。



ずっと昔から友達だったような気がするけど、彼は僕に対して同じように感じてくれるだろうか。



「血迷ったことをいうな」と、自分自身を皮肉る時のような口調で彼は僕に対して言うだろうか。



羅生門に咲いた華もやはりまた誰かの靴底の下で踏まれて折れて枯れて朽ちる。



一巡回ればどこぞで見たのと同じのがまたやってくる。



調和通りの混沌を巡る不毛な回転によって全部を擦り切らす前に、自ら木馬を降りた君が多分きっと正しい。



尊敬もしないし好感も抱かないけど、理解はできる。



これは河の向こうで待つ或る阿呆に宛てたものだ。

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12 /07 2013
jk2

「女子校生を拉致って薬でトバして犯しまくって従順な肉便器にしたった」販売開始されたよ。

一日遅れてgyuttoさんでも販売開始されたよ。「女子校生を拉致して薬でトバして犯しまくって従順な肉便器にしたった」体験版も各ダウンロード販売サイトさんにおいてあるよ!てことでよろしく!!   

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DLsite→ http://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ125389.html  

gyutto→ http://gyutto.com/i/item115889 

メランコル

基本エッチな絵を描いてます`~`

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